『The trouble of love〜前編〜』
桜舞う公園でに告白されて1ヶ月 俺達は東京⇔京都の遠距離恋愛を続けている 最初から遠距離恋愛なるとわかっていたから、俺なりに自分の気持を押し殺してきた だけど、あの日のの言葉で目が覚めた 京都で一緒に仕事をしていた時は気の利くしっかりした女性だと思っていたが じつは、天然が入っていると気が付いたのは初めて喧嘩をした・・・あの夜 正直、離れていると・・・の事が心配になる 「沙緒ちゃんってば、ちょっと飲みすぎだよ?」 「いいの!今日は徹底的に飲むんだから♪」 あの日は中学の同窓会があって、京都に戻っていたのだけれど 当時片思いだった・・・いや、正直に言えばフラレた事のある沙緒も来ていた なぜだか、凄い勢いで飲んでいる 「何があったの?」 「うん?長野君は優しいね?・・・なんで、私・・・長野君にしなかったんだろ?」 「はい?」 どうやら、沙緒は旦那と喧嘩したようだ みんなは、いつもの事だからと素っ気無いが・・・なぜか、ほっとけなくて相手をし ている俺 の事が気にならない訳じゃないけど、あいつは会社の飲み会だといっていた たぶん、昌行の店に行くかもしれないと言ってあるから。終わる頃は、そんな遅い時 間じゃないし 「ちゃんと、歩いて?」 「ちゃんとあるいれるよ?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 二次会も終わり、みんなが散らばって帰って行く 案の定、酔い潰れた沙緒を送っていく羽目になった俺は 沙緒を抱えて、路のすぐ脇でタクシーを探していた ただそれだけだった でも・・・ちょっとした事なのに、あんな喧嘩になるなんて 「さん、もう一軒行こうよ?」 「あぁ・・ごめんなさい。この後、約束があるんで」 やっと、会社の飲み会が終わった 約束があるなんて嘘 博さんが帰ってきてるから、少しでも一緒にいたくて 私は昌行さんの店に行くつもり こっちにいる間は、博さんは昌行さんの部屋に泊まる事になっている もしかしたら、今日の同窓会が終わったら寄るかもしれないと言っていたから・・・ 「あれ。博・・・・・さん?」 道路の反対側に、私は博さんの姿を見つけた 最初は、この偶然に心を躍らせたけど・・・次の瞬間 「きゃっ!」 「もう・・・大丈夫?」 体勢を崩した沙緒を支えるつもりで手を伸ばしたのに 結果的には・・・抱きしめてしまった 他意はない・・・本当に! 「沙緒・・・ちゃん?」 「もう少しだけ・・・このままでいて?」 酔ったせいか、気弱になった彼女は俺の胸に顔をうずめた 他意はないはずなのに・・・俺は抱きしめていた手に力を入れてしまった ただ、励ますつもりだけだったのに・・・ 「何が原因で喧嘩したかわからないけど・・・ちゃんと話し合ったほうが良いよ? 無くしてから後悔しても遅いって時があるんだから」 「・・・うん。そうだね?明日にでも、旦那と話してみる。ごめんね?長野君」 彼女は、やっと学生時代と同じ笑顔を見せてくれた 今日、会ったときから何かに心を奪われているようで心ここにあらず状態 好きだから、少しのすれ違いでも敏感になってしまうんだろう 送って行くタクシーの中でも・・・旦那の話ばかり こんな彼女を見ていると、俺のも俺がいない所でこんな感じなんだろうか? 早く、に逢いたい・・・ 気が付くと私は昌行さんの店の前に立っていた 博さんが知らない女性と抱き合っている そんな光景から、逃げ出すようにその場から走ってきたけど どうやってここに来たか・・・覚えていない でも、あの光景だけは焼き付いて・・・離れない こぼれ続ける涙が、不安を掻き立てる このまま、店に入れば昌行さんに心配をかける・・・ それに、博さんも来るかもしれない 私は慌てて立ち去ろうとした時・・・ 「・・・か?」 「昌行さん・・・」 ひと足遅かった。なぜか、昌行さんが店から出て来て見つかってしまった 慌てて涙を見られないように後ろを向いたけど遅かったみたい 「泣いてるのか?・・・とにかく、店に入れよ?」 「ううん・・・今日は帰ります」 「いいから来い・・・何があったか言いたくなかったら聞かない でも、一杯ぐらいは飲んでけ?」 そう言うと、昌行さんに背中を押され店の中に 博さんにココを紹介されて、居心地の良さに釣られて今では常連になってしまった 昌行さんに話してしまったら楽になれるかもしれない でも、昌行さんは博の親友・・・だから話せっこない 「今夜はおごるから、気が済むまで飲めよ?リクあるか?」 「ううん。飲みたい気分じゃ・・・」 「本当にそうか?俺がおごるなんて滅多にないんだ、いいから言ってみろよ?」 「じゃ・・・・甘くて、思いっきり酔えて・・・嫌な事忘れられるの!!」 「・・・・ふぅ〜。わかったよ」 カウンターに座らされた私に昌行さんの微笑みに少し救われた感じがした 無茶な私のお願いも、溜息をついた後に笑顔で受けてくれた 『あれは何かの間違いだと・・・きっとそう。博に限って浮気なんてする訳ない』 そう、言い聞かせるように心の中で何度もつぶやく でも、これからも遠距離恋愛かと思うと・・・ 自信がなくて、不安がさっきの光景が間違いじゃないと呟く 「こんなのはどうだ?」 「綺麗・・・」 「だろ?見た目でも満足できたなら・・・飲んでみろ?」 細い繊細なラインのカクテルグラスには青と紫のグラデーションの効かせたお酒 ところどころに氷に反射して輝いてる 昌行さんに進められるまま、口に運ぶと・・・淡いライムの味が広がって来た 「昌行さん、美味しい♪」 「そうか?今日は嫌な事は、とりあえず忘れな・・・」 そして、私は・・・・ 博の事を忘れたい一心でカクテルに見とれながら酔いを待った 「沙緒ちゃん。元気でね?」 「うん。長野君も♪それと・・・ありがとう」 そう言って、沙緒は自宅へと走っていく 電灯に照らされた彼女の家の玄関前には男性の人影 それを見つけた沙緒の後姿は嬉しそうに見える 温かい家庭。大事な人の待つ場所 帰りのタクシーの中で、ふと羨ましく思えてしまった きっと、と離れて過しているから特に温かく見えてしまうのだろうか? 「昌行さん!こんろは・・・みろり♪うんと綺麗なのにぇ?」 「今度はみどり?」 は、2杯目で酔いが回ってきたのだろう・・・カクテルの注文は色にこだわってきた まるで、パレットだ まぶたは重たそうになっていて、ろれつも回っていない 何かを忘れたくて飲んでいるのは経験上、すぐにわかるが・・・ 酔いが回っても・・・忘れたいものは、忘れられないのだろう ・・・瞳の奥は、寂しさに溢れていた まっ、酔っても博に連れて帰らせばいいだけの事だからな 「まにゃゆきにゃん・・・あたち、もう帰るにぇ?」 「おい・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」 6杯目のカクテルを飲んだ直後には壊れた・・・とてつもなく・・・愉快な壊れ方だ カウンターの隅に座らせていたは・・・隣にあった鉢植えのベンジャミンに話かけている 「にぇ・・・なにかいっちぇよ?」 「。悪いが、俺はこっちだぞ?」 カウンター越しに話かけても、まだはベンジャミンに話かけている 確かに鉢植えのベンジャミンにしては大きい方だ 俺より少し小さいくらい だからって、それが俺なのか? そして、の奇行は他の客の注目の的になりかけてる 「まにゃゆきにゃん、きいて・・ひろちがね・・・ひろちが・・・」 そう、ベンジャミンに話しかけたかと思うと・・・ポタポタと大粒の涙を落とし始めた 涙の原因は・・・『博』らしい 「まったく・・・付き合っても手間のかかる二人だよな・・・」 そして、俺は携帯を持って奥に行く 「もう・・・なんにぇ、何もいってくれにゃいの? もう・・・わかった!まにゃゆきにゃんの部屋で飲もうよ? いくにょ、まにゃゆき!!」 戻ってきても、相変わらずベンジャミンに話かけている 植物に返事しろって言ってもな・・・・って 「おいっ・・・、それはレンタルなんだ。持って帰るなっ!」 「うるにゃいにゃ。わたちはこんにゃ、まにゃゆきにゃんととことんにょむにょ! ぶがいにゃは、にゃまっにぇにぇ」 ぷっ・・・ベンジャミンを持ち帰ろうとして一生懸命持つが到底が運べるわけがない しかも、彼女の言語中枢は完全に崩壊していて何語かわからない 「・・・。どうしたの?それ、どこに持って行くつもり?」 俺の連絡で慌てて駆けつけた博の目に飛び込んだ、この光景に戸惑いを見せながらも に優しく語り掛ける 惚れているのはわかるが・・・もう少し、この光景に動じてくれよ? 「・・・・・・ちろちぃ?」 「そうだよ?(博って言ったんだよね?)」 「ちろちぃの・・・・・・・・・・・・・・ばかぁ〜!」 「はいっ?」 くっくくくく。ダメだ。これ以上、この光景に耐えられない いくら俺だって、これ以上は・・・・笑いを我慢できない きっと、ココにいる人の全員が同じ状況だろう 不自然にうつむいてるのは、その証拠だ 「博、とりあえず俺の部屋に行けよ。それで、ちゃんとの話を聞いてやれ」 「でも、それじゃ昌行が?」 「俺はここの仮眠室で寝るから大丈夫だよ?さっさと、行けよ♪」 追い出すようで悪いが、この店の雰囲気もあるし・・・客に笑いを我慢させる訳には行かな いんでね? 俺は、博に部屋の鍵を渡して自分は店に泊まる事にした 「じゃ、昌行。ありがとう 、帰ろう?帰ってから、話は聞くから・・・ねっ?」 「まにゃゆきもいっにょらよ?」 「(良くわかんないけど・・・)いいよ♪」 「にゃら、いっにぇっもいいにょ」 博は大事そうにを連れて行った そして、嵐は去が去った店には何とも云えない妙な空気が漂っていた だが、・・・・ お前が今度ココに来た時は・・・自分が話題の中心になっている事に驚くだろうよ? なんせ、今日の客は・・・常連ばかりだからな♪ |